2025/07/27
【アートスクール】フォトレポート『自分だけの植物「ツギキメラ」を作りながら植物学を学ぼう』 切江志龍 / 植物学者、美術作家 (2025.7.26)
「接木(つぎき)」という言葉を聞いたことはありますか?
植物と植物をつなぎ合わせる技術のことで、
それぞれの植物の長所を生かして育てることができます。
身近なものでは、スイカの土台(台木)にカボチャを使った接木の苗があります。
接木の技術自体は千年以上も前からの古いものですが、
これまではカボチャとスイカのように「近い」植物同士で行われてきました。
実は近年の研究で、タバコの仲間の植物は「遠い」植物と接木できることがわかってきました。
これまで接木できないと思われていた植物同士で
新しい植物を生み出せる可能性が広がっていったのです。
植物学者で美術作家の切江志龍さんによる「ツギキメラ」アートスクールは、
そのような最新の研究から生まれました。
まずは接木について理解するために、植物の進化や分類についてお話ししてくれました。
地域、国、地方、都道府県、市町村…と地名が階層化されているのと同じように、
植物にも階層的な分類があって、進化の流れに沿って枝分かれしているので「系統樹」と言われます。
…といった説明を入り口に、最初の実践に取り組みます。
テーブルの上には、たくさんの野菜やハーブと
「カタバミ目」「シソ目」などの分類が書かれた紙が並んでいます。
これをみんなで協力して、どの植物がどの「目」にあたるか、考えて紙の上に置いていきます。
「ブロッコリーはアブラナ科だと思う!」
「ローズマリーは匂いも葉もラベンダーに似ている」
「ししとうとパプリカはそっくりだよね」
それぞれの知識を持ち寄り、一つひとつを観察しながら、大いに盛り上がります。
まとまったところで切江さんが答えを明かすと、
意外なものに驚きの声があがりながら、6割ぐらいは見事に正解。
どの植物も該当しないものもあり、身近な植物の「目」は限られていることがわかりました。
分類について学んだところで、「ツギキメラ」に向かって次のステップです。
植物のパーツには何があるでしょう?
「根、茎、葉!」……植物好きが集まったこともあり、すぐに答えが出ました。
先ほどの植物からパーツを集めて並べ、「こういう植物があったらかっこいいな」
というオリジナルの植物を、コラージュのような標本の形で作ります。
葉っぱを取り揃えたり、野菜のヘタ=ガクの部分に注目したり、並べ方にも個性が出ます。
厚みのある野菜の実を集合させる子の作品は、アルチンボルドの絵のようです。
レンジで乾かすと、野菜とハーブから思いがけずいい香りが漂ってきて、お腹が空いたという子も。
植物を知り、触れ合ったところで、いよいよ「ツギキメラ」に挑戦します。
台となるのは、「タバコ」の仲間で夏に鮮やかな花を咲かせる「ペチュニア」。
先となるのは、おなじみの「ミニトマト」です。
ミニトマトの芽を残して茎を切り先を尖らせ、ペチュニアの茎に切れ込みを入れて差し込みます。
細胞を潰さないように鋭い剃刀の刃を使い、接合した茎同士をパラフィルムテープで留めていきます。
選んだ苗から良さそうな部分を見つけ、大人にも手伝ってもらいながら、
シャーレを台にしてていねいに茎を切っていきます。
細かく慣れない作業に苦戦しながらも、どうにか完成!
接木に成功していれば1週間ぐらいで接着して芽が伸びていきます。
植物学の入り口から、最新の「ツギキメラ」まで、3時間で一気にかけぬけました。
参加者には夏休みの自由研究にしたい小学生や農学部志望の高校生もいましたが、
さまざまな角度から植物を知ったことで、自分は植物のどこに興味があるのか、
改めて考えるきっかけになったのではないでしょうか。
これからも、その探究心を持ち続けてくださいね。


















